『孔子家語』現代語訳:致思第八(2)

孔子家語・原文

論語 孔子家語 孔子聖蹟図  饋食欣食
魯有儉嗇者,瓦鬲煮食食之,自謂其美。盛之土型,以進孔子,孔子受之,而說,如受大牢之饋。子路曰:「瓦甂、陋器也;煮食、薄膳也。夫子何喜之如此乎?」夫子曰:「夫好諫者思其君,食美者思其親;吾非以饌具之為厚,以其食厚而我思焉!」

論語 孔子家語 孔子聖蹟図  受魚致祭
孔子之楚,而有漁者獻魚焉。孔子不受,漁者曰:「天暑市遠,無所鬻也,思慮棄之糞壤,不如獻之君子,故敢以進焉。」於是夫子再拜受之,使弟子掃地,將以享祭。門人曰:「彼將棄之,而夫子以祭之,何也?」孔子曰:「吾聞諸惜其務䭃而欲以務施者,仁人之偶也。惡有仁人之饋而無祭者乎?」

季羔為衛之士師,刖人之足。俄而衛有蒯聵之亂,季羔逃之。走郭門,刖者守門焉,謂季羔曰:「彼有缺。」季羔曰:「君子不踰。」又曰:「彼有竇。」季羔曰:「君子不隧。」又曰:「於此有室。」季羔乃入焉。既而追者罷,羔將去,謂刖者曰:「吾不能虧主之法而親刖子之足。今吾在難,此正子之報怨之時,而逃我者三,何故哉?」刖者曰:「斷足固我之罪,無可奈何。曩者君治臣以法令先人後臣,欲臣之免也,臣知之;獄決罪定,臨當論刑,君愀然不樂,見君顏色,臣又知之。君豈私臣哉!天生君子,其道固然,此臣之所以說君也。」孔子聞之,曰:「善哉為吏!其用法一也。思仁恕則樹德,加嚴暴則樹怨,公以行之,其子羔乎?」

孔子家語・書き下し

魯に倹み嗇しむ者有りて、瓦鬲(ガレキ)もて食を煮て之を食い、自ら其の美を謂う。之を土型に盛り、以て孔子に進むや、孔子之を受け而(て)説び、大牢之饋(キ)を受けるが如くす。子路曰く、「瓦甂(ガヘン)は、陋しき器也。煮たる食は、薄き膳(あえ)也。夫子何ぞ之を喜びて此の如くする乎」と。夫子曰く、「夫れ好く諌める者は其の君を思い、食の美(うま)き者は其の親を思う。吾れ饌具之厚きと為すを以てするに非ず、其の食厚くし而我思うを以てせ焉(ん)」と。

孔子楚に之き、而て漁る者の魚を献じる有り焉(き)。孔子受けず、漁者曰く、「天暑くして市遠し。粥(に)る所無き也。思い慮るに之を糞壌(フンジョウ)に棄つるより,之を君子に献じるに如かず、故に敢えて以て進め焉(たり)」と。是に於いて夫子再拝して之を受け、弟子を使て地を掃わしめ、将に以て祭を享(もう)く。門人曰く、「彼れ将に之を棄てんとす、而て夫子以て之を祭る、何ぞ也」と。孔子曰く、「吾れ諸を聞けり、其の務め䭃(あ)きたるを惜しみ而以て施しを務めんと欲する者は、仁人之偶(ならび)也と。悪んぞ仁人之饋に而て祭る無き者有らん乎」と。

季羔衛之士師為りて、人之足を刖(き)る。俄に而て衛に蒯聵(カイカイ)之乱有り、季羔之を逃る。郭門を走(に)ぐるに、刖者門を守れ焉(り)て、季羔に謂いて曰く、「彼に欠(あな)有り」と。季羔曰く、「君子踰えず」と。又曰く、「彼に竇(あな)有り」と。季羔曰く、「君子隧(ぬ)けず」と。又曰く、「此(ここ)於(に)室有り」と。季羔乃ち入り焉(たり)。既に而て追う者罷り、羔将に去らんとして、刖者に謂いて曰く、「吾主之法を虧く能わざる而て、親く子之足を刖れり。今吾難に在り、此れ正に子之怨を報ゆる之時、而て我を逃す者(こと)三たび、何故哉」と。刖者曰く、「足を断てるるは固より我之罪にして、奈何とす可き無し。曩者(さき)に君、臣を治むるに法令を以てし、人を先んじ臣を後にするは、臣之免るるを欲すれば也、臣之を知る。獄決り罪定まり、当に刑を論じるに臨みて、君愀然として楽しまず、君の顔色を見て、臣又之を知る。君豈に臣を私したる哉。天君子を生みて、其の道固り然り、此れ臣之所以て君を説(よろこ)ぶ也」と。孔子之を聞きて曰く、「善き哉吏為ること。其の法を用いるや一也。仁恕を思いて則ち徳は樹ち、厳しき暴を加えて則ち怨み樹つ。公以て之を行うは、其れ子羔乎」と。

孔子家語・現代語訳

魯にケチで有名な男がいた。粗末な三本足の鍋で煮て食い、うまいものだと思い込んでいた。その食事を粗末な土の器に盛り、孔子にすすめたところ、孔子はそれを受け取って喜び、まるで最上級のご馳走を貰ったような態度を取った。

子路「こんな粗末な器に、こんな貧乏くさい食べものを盛ったのに、どうしてそんなに有り難がるのです?」

孔子「昔から言うだろう。よく諌める家臣は主君思いだ、うまい食事を親に食わせる者は孝行者だと。器と中身が上等だから有り難がるんじゃない。私を思えばこそだと思うから、こうして有り難がっている。」

孔子が楚に行き、漁師が魚を差し出したことがあった。孔子は受け取らなかった。

漁師「暑い日和で、売るにも市場は遠く、調理するにも場所がありません。考えた末、肥溜めに捨てるよりは、君子の方に差し上げた方がいいかと思って。だからこうしたのです。」

それを聞いた孔子は漁師を二度拝んで魚を受け取り、弟子に地面を掃除させて、魚を祭ろう(魚の葬儀をする)とした。

門人「漁師は捨てようとしたんですよ? 何でわざわざ祭るのです?」

孔子「こういう話がある。まじめに働いた結果がダメになるのを惜しんで人に与えるのは、仁者と同じだと。どうして仁者から受け取ったご馳走を、祭らないでいられようか。」

季羔が衛国の判事になって、ある罪人を足切り刑にした。直後に蒯聵(カイカイ)の乱があって、季羔は逃げようとした。公宮の門を出ようとすると、処罰した足切り人が門番をしていた。

門番「あそこに城壁の破れがあります。お逃げなさい。」
季羔「君子は破れを出入りしないものだ。」

門番「あそこに抜け穴があります。」
季羔「君子は抜け穴を通らない。」

門番「それならここに隠し部屋があります。」季羔は隠れた。

季羔を追っていた者がいなくなると、そこを去る前に季羔は門番に言った。
「私は主君の法を守るために、そなたを足切り刑にした。今私は危機にいる。まさに仇討ちにはうってつけだ。なのになぜ、三度も逃がそうとしたのだ?」

門番「足を切られたのはもともと私のせいで、どうしようもないことです。あなたは法令に基づいて私を処罰し、それでも他人の処刑を先にして、私を後回しにしました。たぶん私を免罪しようとしたのでしょう。判決を出す際も、あなたはとても苦しそうでした。天の神様がこの世に君子を生まれさせたのです。判決はもっともなことでしょう。だからあなたに好意を持ったのです。」

孔子が話を聞いて言った。「よい役人だ。同じ法を運用するにしても、情けや思いやりがあれば人徳が生まれ、いじめの心があれば怨みが生まれる。公平に法を運用できたのは、子羔らしいな。」

孔子家語・訳注

瓦鬲:三つ足の土器。

大牢之饋:牛・羊・豚の肉を揃えたセット料理。最上の料理とされた。

瓦甂:土器の深めの皿。ほとぎ。

糞壌:肥溜め。

䭃:音不明。『広韻』に「飪(ジン:似る)と同じ」とあり、『玉篇』に「飽と同じ」とある。また異本によるとこの部分は、「腐䭃を惜しむ」とある。

刖(ゲツ):足切り刑。異説に膝を打ち砕く刑という。

季羔(キコウ):=子羔。子路の弟弟子で、衛に仕えていた。

士師:司法官。検事と判事を兼ねる。

蒯聵(カイカイ):当時の衛公・出公の父親で、亡命して復位を狙っていた。

孔子家語・付記

1・2は『説苑』のコピペ。3は『春秋左氏伝』や『史記』のコピペを潤色したもの。いきさつについては『史記』衛世家・出公に詳しい。

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