『孔子家語』現代語訳:儒行解第五(2)

孔子家語・原文

儒有委之以貨財而不貪,淹之以樂好而不淫,劫之以眾而不懼,阻之以兵而不攝;見利不虧其義,見死不更其守;鷙蟲攫搏不程其勇,引重鼎不程其力;往者不悔,來者不豫;過言不再,流言不極;不斷其威,不習其謀;其特立有如此者。
儒有可親而不可劫,可近而不可迫,可殺而不可辱;其居處不過,其飲食不溽,其過失可微辯而不可面數也;其剛毅有如此者。
儒有忠信以為甲冑,禮義為干櫓;戴仁而行,抱義而處;雖有暴政,不更其所;其自立有如此者。
儒有一畝之宮,環堵之室,篳門圭窬,蓬戶甕牖,易衣而出,并日而食;上荅之,不敢以疑;上不荅,不敢以諂;其士*有如此者。
儒有今人以居,古人以稽,今世行之,後世以為楷;若不逢*世,上所不援,下所不推,詭諂之民,有比黨而危之者,身可危也,其志不可奪也;雖危,起居猶竟信其志,乃不忘百姓之病也;其憂思有如此者。
儒有博學而不窮,篤行而不倦,幽居而不淫,上通而不困;禮必以和,優游以法,慕賢而容眾,毀方而瓦合;其寬裕有如此者。

*和刻本により仕を改めた。

*同じく逄を改めた。

孔子家語・書き下し

「儒にこれ有り。之に委ぬるに貨財を以て而て貪ぼら不。之を淹(ひた)すに楽の好きを以て而て淫(ふけ)ら不、之を劫かすに眾を以て而て懼れ不、之を阻むに兵を以て而て懾(おそ)れ不。利を見ては其の義を欠かさ不、死を見て其の守りを更め不。鷙虫(シチュウ)攫い搏つとも其の勇を程(み)せ不、重き鼎を引きても其の力を程(み)せ不。往く者は悔い不、来る者は予めせ不。言を過ちて再びせ不、流言は極め不、其の威を断た不、其の謀を習わ不。其の特に立てるは此の如き者有り。

儒にこれ有り。親む可く而て劫かす可から不、近づき可く而て迫る可から不、殺す可く而て辱む可から不。其も居る処は過ぎ不、其の飲食は溽(こ)から不、其の過失は微に弁べる可く而て面に数う可から不る也。其の剛毅たる此の如き者有り。

儒にこれ有り。忠信以て甲冑を為し、礼義もて干櫓と為し、仁を戴き而行い、義を抱き而処り、暴政有ると雖も、其の所を更え不。其の自ら立てるや此の如き者有り。

儒にこれ有り。一畝之宮(いえ)、堵環したる之室、篳門圭窬(ヒツモンケイユ)、蓬戸甕牖(ホウコオウユウ)、衣を易え而出で、日を并せ而食う。上之に荅うるも、敢ては以て疑わ不、上荅え不すも、敢えては以て諂らわ不。其の士たるや此の如き者有り。

儒にこれ有り。今人以て居るも、古人以て稽え、今世の之を行うも、後世以て楷(のっと)ると為す。若し世に逢わ不、上の援くる所なら不、下の推す所なら不、詭り諂い之民、比び党(つる)み而之を危うくする者有りて、身を危うくす可き也も、其の志奪う可から不る也。危きと雖も、起居猶お竟に其の志を信じ、乃ち百姓之病を忘れ不る也。其の憂い思うや此の如き者有り。

儒にこれ有り。博く学び而窮まら不、篤く行い而倦ま不、幽(かく)れ居り而淫(ふけ)ら不、上に通じ而困しま不、礼は必ず和を以てし、優游(ひま)なるに法を以てし、賢を慕い而眾を容れ、方を毀ち而瓦合す。其の寛やかにして裕やかなるや此の如き者有り。」

孔子家語・現代語訳

〔承前〕

孔子「儒者とはこういう者です。貨財を与えても欲張らず、妙なる音楽を聴かせてもふけらず、大勢で脅しても恐れず、軍隊で阻んでも恐れない。利益を見ても正義から外れず、死を目前にしても主義を曲げず、猛獣が襲ってきても勇み立たず、重い鼎を見せても力自慢しない。

済んだことは悔いず、未来を決めつけない。言葉を間違えても二度と間違わず、流言は当てにせず、権威に逆らわず、悪だくみには関わらない。その独立している様はこの通りです。

親みやすいが脅かせない。近づきやすいが強要できない。殺せるが辱められない。住まいは贅沢でなく、飲食は薄味で、過失はほじくれば出て来るが表面に現れない。その剛毅たるさまはこの通りです。

まごころと信頼をよろいかぶとにし、礼義を武器防具とし、仁に従って行動し、正義を思いながら生活し、暴政が行われても逃げ出さず、自立しているさまはこの通りです。

小さな住まい、垣根を巡らした部屋、粗末な門扉のボロ屋に住まい、外出には一張羅で、二日に一度しか食べず、主君が援助しても下心を疑わず、援助がなくてもへつらったりしない。その士族らしさはこの通りです。

現代人の言うことも、古人の言葉と引き比べて考え、現代の流行も、後世の手本にふさわしいか考える。もし世の中と合わなくて、主君は援助せず、民は推薦せず、悪口とへつらいを事とする連中がつるんで脅かそうとしても、体は傷付けられるが志は奪えない。危険に陥っても、最後まで志を曲げず、民衆の苦しみを憂う。その憂い思うことはこの通りです。

どこまでも広く学んで終わらず、丁寧に行動してうんざりせず、隠居しても悪事を働かず、高尚な事柄に通じて行き詰まらず、礼儀には必ず和みを伴い、暇つぶしにも原則があり、賢者を慕って誰でも受け入れ、自分の角を取って誰とでも付き合う。その寛容と余裕はこの通りです。」

孔子家語・訳注

鷙虫:凶暴な猛獣

畝:〔『大漢和辞典』〕六尺四方を歩、百歩を一畝とする。〔wikipedia〕周代の一尺≒20cm

干櫓:さすまたと盾。

篳門圭窬:〔漢語網〕柴門小戶。喻指窮人的住處。

蓬戸甕牖:草むらに埋もれた戸に、壊れた甕の口で造った窓。原憲が住んでいたことになっている。

論語 趙孟頫『甕牖図』国立故宮博物院蔵

趙孟頫『甕牖図』国立故宮博物院蔵

瓦合:自分の角を取って迎合する。

孔子家語・付記

前回に同じ。まだ続く。

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