『孔子家語』現代語訳:問礼第六(2)

孔子家語・原文

言偃問曰:「夫子之極言禮也,可得而聞乎?」孔子言:「我欲觀夏道,是故之杞,而不足徵,吾得《夏時》焉;我欲觀殷道,是故之宋,而不足徵也,吾得《乾坤》焉。《乾坤》之義,《夏時》之等,吾以此觀之。夫禮初也,始於飲食。太古之時,燔黍擘豚,汙罇而抔飲,蕢桴而土鼓,猶可以致敬於鬼神。及其死也,升屋而號,曰:『高!某復。』然後飲腥苴熟,形體則降,魂氣則上,是為天望而地藏也。故生者南嚮,死者北首,皆從其初也。昔之王者,未有宮室,冬則居營窟,夏則居橧巢;未有火化,食草木之實、鳥獸之肉,飲其血,茹其毛;未有絲麻,衣其羽皮。後聖有作,然後脩火之利;範金合土,以為臺榭、宮室、戶牖;以炮以燔,以烹以炙,以為醴酪,治其絲麻,以為布帛;以養生送死,以事鬼神。故玄酒在室,醴、醆在戶,粢醍在堂,澄酒在下,陳其犧牲,備其鼎俎,列其琴、瑟、管、磬、鐘、鼓,以其祝嘏,以降其上神,與其先祖;以正君臣,以篤父子,以睦兄弟,以齊上下,夫婦有所,是謂承天之祜。作其祝號,玄酒以祭,薦其血毛,腥其俎;熟其殽,趏席以坐,疏布以罩,衣其浣帛,醴、醆以獻,薦其燔炙,君與夫人交獻,以嘉魂魄;是謂合莫。然後退而合烹,體其犬豕牛羊,實其簠、簋、籩、豆、鉶羹,祝以孝告,嘏以慈告,是為大祥。此禮之大成也。」

孔子家語・書き下し

言偃問うて曰く、「夫れ子之礼を極言する也,聞いて得べきか」と。孔子言う。「我夏の道を観んと欲し、是の故(ゆえ)杞に之き、而て徴るに足らざるも、吾れ夏時を得焉(たり)。我殷の道を観んと欲し、是れ故の宋に之き、而て徴るに足らざるも、吾れ乾坤を得焉(たり)。乾坤之義、夏時之等、吾此を以て之を観る。夫れ礼の初まり也、飲食に始まる。太古之時、黍を燔きて豚を擘(さ)き、汙罇而て抔飲し、蕢桴而て土鼓をなし、猶お以て鬼神に敬いを致す可し。其の死に及ぶ也、屋を升り而号き、曰く、『高(ああ)、某復れ。』然る後に飲腥苴熟し、形体則ち降り、魂気は則ち上る、是れ天を望み而地に蔵すと為す也。故に生者は南を嚮き、死者は北に首むくは、皆其の初めに従う也。昔之王者は、未だ宮室有らず、冬は則ち窟を営みて居り、夏は則ち巣を橧けて居る。未だ火の化(おしえ)有らず、草木之実、鳥獣之肉を食らい、其の血を飲み、其の毛を茹(う)く。未だ糸麻有らず、其の羽皮を衣る。後に聖の作す有りて、然る後火之利を脩め、金を範(かたど)り土を合わせ、以て台榭、宮室、戸牖を為る。以て炮し以て燔し、以て烹し以て炙り、以て醴酪を為し、其の糸麻を治め、以て布帛を為り、以て生を養い死を送り、以て鬼神に事う。故に玄酒は室に在り、醴、醆は戸に在り、粢醍は堂に在り、澄酒は下に在り、其の犠牲を陳べ、其の鼎俎を備え、其の琴、瑟、管、磬、鐘、鼓を列ね、以て其の祝(いのり)嘏(カ・ほぎごと)をなし、以て其の上神を降し、其の先祖を与にす。以て君臣を正し、以て父子を篤くし、以て兄弟に睦み、以て上下を斉え、夫婦所有りて、是を承天之祜(さいわい)と謂う。其の祝号を作すに、玄酒以て祭り、其の血毛を薦め、其の俎を腥くす。其の殽(コウ)を熟(に)、趏(カツ)席以て坐り、疏き布以て罩(うおかご)をなし、其の浣(あら)い帛を衣(まと)い、醴、醆以て献じ、其の燔炙(やきにく)を薦め、君与夫人献じを交し、以て魂魄を嘉す。是を合莫と謂う。然る後に退き而烹たるを合せ、其の犬豕牛羊を体(さ)き、其の簠、簋、籩、豆、鉶羮を実たし、祝は以て孝を告げ、嘏は以て慈を告ぐ、是を大祥と為す。此れ礼之大いに成る也。」

孔子家語・現代語訳

子游(言偃)が問うた。「先生の礼の極限を伺っていいですか。」孔子が言った。「私は夏の礼道を見ようとしてその末裔の杞に行き、取るに足りなかったが、”夏時”を得た。殷の礼道を見ようとしてその末裔の宋に行き、取るに足りなかったが”乾坤”を得た。

乾坤の内容や夏時の配列から、私は礼を知ろうとした。そもそも礼の始まりは、飲食にある。太古の時代、キビを干して豚を切り、土に穴を掘って樽とし、手ですくって飲み、土や草で楽器を作って土の鼓を作り、それでもやはり神や亡霊を敬うことができた。

人が死ぬと、屋根に上って号泣し、”ああ、何某帰ってこい”と叫んだ。その後で貝殻や生の穀物を口に含ませ、死体を放置して腐らせ、体は地面に消えて、魂は天に昇った。こうして天に祈って地に返した。だから生きた者は南向きに寝て、死者は北枕にするのだが、これらは太古の習慣に従ったのだ。

昔の王者は、まだ宮殿が無くて、冬は洞窟に、夏は木に巣をかけて住んだ。まだ火を使うことを知らず、草木の実、鳥獣の肉を食らい、その血を飲み、その毛まで食べた。まだ糸や布が無く、鳥獣の羽や皮を着た。後に聖人が現れて、その後で火の使い方を知り、青銅を鋳て土器を作り、それでやぐらや宮殿、戸や窓を作った。

焼いたり遠火であぶったり煮たりあぶったりして、酒を造り、糸や布を作り、麻布や絹布を織り、それで生きた者を養い、死者を弔い、鬼神を祀った。だから黒い酒は寝室に置き、どぶろくや酸っぱい酒は戸の際に置き、赤酒は表座敷に置き、澄んだ酒は軒下に置いた。

祭祀の犠牲を並べ、かなえやまな板を備え、管弦打楽器を並べ、祝詞を唱え、それで天の神を降し、先祖の霊を呼んだ。その祭祀で君臣の道を正し、父子の道を篤くし、兄弟と睦み、上下の身分を整え、夫婦はそれぞれの役割があった。これを承天の祜(さいわい)と言った。

祝詞を唱える前に、黒酒で清め、生け贄の血と毛を神霊に薦め、生け贄を殺してまな板を血でぬらした。骨付き肉を煮て、草の座布団に坐り、粗布で魚かごを作り、さらした絹の服をまとい、どぶろくや酸っぱい酒を献じ、焼き肉を薦め、君主と夫人は酒を献じ交し、それで魂魄をもてなした。これを合莫(ゴウバク)と言う。

その後で会場を退き、生け贄を合せて煮て、犬・豚・牛・羊を切り、祭器を満たし、祝の祝詞で子孫の孝行を告げ、嘏の祝詞で先祖の慈愛を告げる。これを大祥と言う。これが礼の極まりだ。」

孔子家語・訳注

夏時:〔漢語網〕夏代的歷法。

乾坤:〔漢語網〕《易》的乾卦和坤卦。

汙罇:〔漢語網〕古代掘地為坑當酒尊。

抔飲:〔漢語網〕以手掬水而飲。

蕢桴:〔漢語網〕用草和土摶成的鼓槌。

土鼓:〔漢語網〕亦作“ 土皷 ”。古樂器名。鼓的一種。

飲腥苴熟:〔漢語網〕古代送死送葬的風俗。人剛死,使口含珠貝或生稻之米,安葬前,在苞苴上放置熟物祭奠死者。

天望而地藏:O-Vと読むしか解しようがない。『大漢和辞典』に「天望」の語釈として「人の死んだ直後、天を望んで叫び魂気を招くこと」、「地蔵」は「地にかくれること」とある。いずれもO-Vであることは言うまでもない。

台榭:〔漢語網〕臺和榭。亦泛指樓臺等建筑物。

醴酪:〔漢語網〕酒漿。

粢醍:〔漢語網〕淺紅色的清酒。

殽:骨付き肉。

趏:草の名。

合莫:生者の嘉言が死者の魂魄に通ってそれを喜ばせること。

鉶羮:〔漢語網〕古祭祀時盛在铏器中的調以五味的羹。

孔子家語・付記

『小載礼記』のコピペ。子游は孔子一門から葬儀屋の大親方になった弟子で、キャスティングはいかにもそれらしい。

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